英語力ランキング批判
EF-EPI・TOEFLスコア・英語教育実施状況調査
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.960キーワード:
英語教育言説、 統計調査、 科学コミュニケーション抄録
本稿は、英語力を国・自治体別にランキング化する言説をとりあげ、それらの問題点を検討し、具体的な改善提案を行うことを目的とした理論的・規範的研究である。英語教育界には、学術文献・商業文献を問わず、何らかの指標を用いた英語力ランキング、および、それに基づく英語教育論が蔓延している。本稿では、こうした言説を英語力ランキング言説(あるいは、より短く、ランキング言説)と呼び、検討の俎上に乗せる。
アウトラインは次の通りである。2節で、ランキング言説として有名な国際英語力ランキングと都道府県ランキングをとりあげ、概要を述べる。3節で、これらの言説の問題点を検討する。具体的には、3.1節で方法論(とりわけ量的社会調査・統計データ分析)に関わる問題点を、3.2.節で負の社会的影響を検討する。2節・3節の理論的検討をふまえ、4節・5節では具体的事例に焦点を当てる。教育界(4節)および学界(5節)においてランキング言説がいかに蔓延しており、また、どのような影響をおよぼし得るかを検討する。最後の6節で、学界・教育界はランキング言説に対してどのように向き合うべきか、具体的な提案とともに論じる。
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投稿日時: 2024-11-10 13:27:30 UTC
公開日時: 2024-11-22 10:03:59 UTC
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