プレプリント / バージョン1

草原性植物の絶滅危惧状況

1997~2020年の環境省レッドリストと生息環境面積の変化から

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  • 冨髙, まほろ 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所 https://orcid.org/0009-0001-5643-0339
  • 井上, 太貴 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所 https://orcid.org/0000-0001-8801-2353
  • 河合, 純 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 關, 岳陽 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 山本, 裕加 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 宮本, 和 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 芳澤, あやか 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 金子, 冬美 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
  • 田中, 健太 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所 https://orcid.org/0000-0002-6234-1017 https://researchmap.jp/read0193085/

DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.835

キーワード:

絶滅危惧種、 環境省レッドリスト、 生息地タイプ、 草地、 絶滅リスク、 保全地

抄録

生物多様性の保全のために保全地を増やすことが国際的な課題となっている。こうした施策の実効性を高める上で優先的に保全すべき生息環境を明らかにすることは重要である。本研究は、維管束植物の1997年・2007年・2020年の環境省レッドリストを用いて、絶滅危惧種の保全にとって重要な生息環境を日本の全国規模で明らかにすることを試みた。絶滅危惧種の生息環境を図鑑等によって調べて「草地」「湿地」「海浜」「岩石地」「農地」「道路」「森林」「林縁」「水生」に分類した。生息環境ごとの絶滅危惧種数は森林が最も多く、次いで岩石地、湿地、草地、林縁、海浜、農地、水生、道路の順だった。非高木が優先する草原的環境のほうが、高木が優先する森林的環境よりも、絶滅危惧種数が多かった。絶滅危惧種の絶滅ランクが上がる割合は、林縁と海浜でやや高い傾向があったものの統計的な支持は得られなかった。生息環境ごとの面積あたりの絶滅危惧種密度は、1963年時点では草原的環境のほうが森林的環境よりも27倍高かった。この差は、近年になるにつれて草原面積が急速に減少していることにより、2020年時点には96倍になった。絶滅危惧種の密度およびその増加速度から、絶滅危惧種を保全する上での生息環境の重要性が、草原的環境の方が森林的環境よりも高いことが示唆された。

利益相反に関する開示

本論文に関して開示すべき利益相反関連事項はない。

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公開済


投稿日時: 2024-07-31 12:49:43 UTC

公開日時: 2024-08-05 00:52:44 UTC
研究分野
環境学