航空輸送の地経学

2019年・2023年の世界・日中航空サプライチェーンの予備的考察

抄録

日本を含む半導体産業や台湾有事の影響についての分析は、個別企業の強みや政府戦略の分析が多く、航空運輸も含めたサプライチェーンについての分析がなかった。本稿は航空交通ネットワーク分析の可能性を探るため、 日本の航空ネットワークが現状でどの国・空港とどの程度つながっているの か把握することを目指した。日本の特徴を浮き立たせるため、比較対象として中国を選択し、COVID19 前の 2019 年とコロナ後の 2023 年のデータを比較した。分析の結果、1)日本は米国および韓国の主要空港を経由して世界とつ ながっており、中国に比べ世界とのつながり強度に目立った優位が見られな かったことがわかり、早急に対策が必要と提言する。2)日本の航空ネットワ ークの構造的な問題として、コロナ禍以降にネットワークが 6%縮小しており、世界とつながる玄関口が韓国の仁川空港となっている反面、成田の存在感が低下し続けていることだ。有事対応を想定しつつ、成田など国内空港のグローバルな競争力を引き上げる自律性向上戦略を準備しなければならない。3)日本は米欧の同盟国・同志国と経済安全保障戦略について一層のすり合わせをしつつ航空ネットワークを強靭化する必要があり、国内の空港の使い方とつながる相手を戦略的に取捨選択していかなければならない。