米国の「ワークフォース開発のローカルガバナンス」と諸組織の活性化

エリア全体のレジリエンスを目指す人材開発のパラダイムシフト

抄録

　「ワークフォース開発」(workforce development)という戦略と実践は、20世紀型の職業教育や職業訓練を超えた、米国の労働市場と地域社会における政策と実践「パラダイムシフト」のであり、地域のレジリエンスに影響を与えるものであると捉えられてきている。本報告は、ワークフォース開発のローカルガバナンスの形成についての準備的研究として具体的テストケースをもって取り組み、以下の知見を得た：
　第一に、1998年の労働力投資法（WIA）施行とワークフォース開発のローカルガバナンスの実質的形成との関連を、シアトル・キングカウンティの事例をもとに準備的に追究した。同地域のキーパーソンへのト調査の結果、シアトル・キングカウンティエリア（SKWDC）での効果的な労働力地方ガバナンスの確立は、連邦政府の指令（1998年ワークフォース投資法）によるものだけでなく、1990年代からすでにシアトル市でなされていた先駆的な努力（新しいコンセプトと調整機関たるSJI組織の設置）によるものであることを明らかにした。
第二に、日本だけでなくアメリカでも長らく見られてきた「福祉からワークフェアへ(from welfare to workfare)」という政策的視点が、当時生起していた福祉とワークとのダイナミズムをより構造的に、より深く理論化することにつながる可能性を認識したことである。