NuSTAR衛星によるRX J1347.5-1145銀河団の硬X線観測
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.426キーワード:
宇宙論、 X線、 銀河団、 銀河団ガス抄録
銀河団の衝突合体は, ビッグバン後の宇宙で最もエネルギーの高いイベントであり, 銀河団の構造形成に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 激しい合体における銀河団ガスの性質を理解することを目的として, RX J1347.5–1145 銀河団(z=0.45)をターゲットに, 硬X線に対する高い感度と撮像能力を持つNuSTAR衛星による観測を行った. 初めに, バックグラウンドを精度よく見積もるため, 望遠鏡の aperture 成分をはじめ各成分の位置依存性を考慮したシミュレーションを行った. これに基づいて, 本観測から空間的に広がった有意な硬X線放射を検出した. 10 keV 以上のエネルギー帯で数百 kpcの広がりを持つ RX J1347.5–1145 銀河団の放射を捉えたのは, 今回が初めてである. 加えて, 表面輝度分布の解析から, 南東領域に硬 X 線放射の超過成分がある事を確認した. 次に, この超過成分に対して3つのモデル, つまり, 熱的放射, 非熱的放射, あるいは熱的放射+非熱的放射と仮定して, エネルギースペクトルのフィッティングを行った. その結果, 南東領域の超過成分は, ガス温度約19.6(-1.9,+2.3)(-1.2,+1.7) keV の熱的放射で説明できる事が分かった. これは, 銀河団同士の激しい衝突に伴うショック加熱が起きた事を支持する. 一方で, 有意な非熱的放射は見られず, 12−60 keV 帯の非熱的フラックスの3σ上限値として 7×10−13 erg/cm2/s を得た. さらに, この測定値と1.4 GHzの電波ミニハローの観測結果を組み合わせると, 銀河団の磁場強度の下限値は, 0.05 µGと見積もられた.
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投稿日時: 2023-11-26 09:53:18 UTC
公開日時: 2023-12-04 08:37:58 UTC
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柴田, 実桜
太田, 直美
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