プレプリント / バージョン1

司法 IT化におけるビデオリンク方式の法廷証言が裁判員の判断に与える影響

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  • 水野, 亮太 立命館大学大学院人間科学研究科
  • 渡邊, 悠希 株式会社USEN-NEXT・HOLDINGSコーポレート統括部
  • 森井, 花音 立命館大学大学院人間科学研究科
  • 若林, 宏輔 立命館大学総合心理学部
  • 藤田, 政博 関西大学社会学部

DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.324

キーワード:

司法の IT化、 ビデオリンク方式、 証言

抄録

日本の司法手続きにおいて司法IT化と呼ばれる出廷者の負担軽減を目的とした一部手続きのオンライン化が検討されている。その一環として証言のビデオリンク方式がある。同方式は遠隔地の証人や性犯罪被害者による証言の負担軽減などが期待される。しかしLandstörmら(2007)の心理学研究に基づけば、ディスプレイ上で提示される証言では従来のものに比べて証人の印象、証言の真偽性の評価、証言内容への記憶のパフォーマンスに差が生じる可能性がある。そこで本研究では裁判における証人尋問を対面で観察する条件(以下FTF条件)、ビデオ会議システムを介して観察する条件(以下VMC条件)を比較し、証人および証言に対する評価への影響を検討した。本実験では実際の裁判に近い環境で比較を行うため、模擬法廷での裁判劇によるFTF条件とVMC条件下の証言観察の結果を比較した。その結果、証人の印象・信用性・任意性においてFTFとVMC間に差が認められ、ビデオ証言の方が好意的に評価される傾向が明らかになった。特に証人の視線に関する評価項目に顕著な差があり、本研究で生じた差には視線の評価が大きく関係していることが分かった。

利益相反に関する開示

なお,本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。

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公開済


投稿日時: 2023-03-10 04:56:07 UTC

公開日時: 2023-03-13 08:12:41 UTC
研究分野
心理学・教育学