地域資源活用のビジネスモデルの特徴

森林レンタルforentaと砂浜美術館の地域的知識創造研究

抄録

本研究は、ビジネスモデル研究と知識創造理論をに基づいて、地域資源の活用に関するビジネスモデルについて考察するものである。これにより、従来のビジネスモデルに新たな要素を加えることで新たな研究分野を開拓するものであり、ビジネスモデル研究と知識創造理論研究の双方が、21世紀の世界が抱える社会課題の解決や社会的価値の創造に資する研究となることを目指す。

ビジネスモデルという概念は1990年代後半から2000年代初めにかけて普及したもので、経営学における研究分野としては比較的新しく、その反映として、ビジネスモデルには確立された定義はないとされる（Teece, 2010）。しかし、その研究は、企業が価値を創造する仕組みを理解し、新たな機会を探す枠組みを提供することを目的とする。特に最近では経済的価値と社会的価値の双方を追求する循環型ビジネスモデルが研究者の関心の中心となっている。しかし、現時点のビジネスモデル研究では、価値提供者、価値受益者と提供価値について、社会や環境などとの関係や非財務的要素の考慮はいまだ不十分であり、多種多様な関係者が関わる地域における価値創造の文脈においての更なる研究が必要である。

一方、知識創造理論は、1990年代に野中郁次郎らが日本初の日本発の経営理論として提唱した、組織における人と人、人と環境の相互作用から生み出される新たな知の創造によるイノベーションと価値創造を説明する理論である（Nonaka, 1991; 1994; Nonaka & Takeuchi, 1995; 2019）。主に営利組織を研究対象として発展してきており、知識創造理論を基盤とするビジネスモデル研究もおこなわれている（Nonaka et al., 2010; Nonaka & Tokuoka, 2009; 2012）。一方、2000年ごろからは経済的価値と社会的価値の同時実現を目的とするソーシャル・イノベーションも研究対象としている。特に、ソーシャル・イノベーションは関係者が多種多様であり、初期段階では必ずしも組織化されていないなどの営利組織とは異なる特徴があることから、地域の知を活かして新たな知を創造するプロセスやそこでの関係者の関係性などを対象とした地域的知識創造の研究が進められている（Hirose, 2011; Nonaka et al., 2014; Nonaka et al., 2021; Nobuta et al., 2023）。しかし、現時点の地域的知識創造理論の研究では、経済的価値と社会的価値を同時に追求する循環型ビジネスモデルの研究までは至っておらず、地方創生などの文脈において、更なる研究が必要である。

そこで、本研究では、地域資源の利用に関する事例を取り上げ、ビジネスモデル研究と知識創造理論に基づいて、地域におけるビジネスモデルについて考察する。これにより、ビジネスモデル研究と知識創造理論の研究をつなぎ、ビジネスモデルの研究に対して学術的かつ実践的な貢献ができると考える。