即時オープンアクセスが拓く学術研究の新世界

ＯＡの理念、要件、実践

抄録

内閣府は、2025年度以降の公的資金による競争的研究費の対象となる研究論文に関して、即時公開を義務付ける方針を示した。この対象となる競争的研究費には、日本学術振興会（Japan Society for the Promotion of Science：JSPS）の科学研究費助成事業（Grants-in-Aid for Scientific Re-search）、国立研究開発法人 科学技術振興機構（Japan Science and Technology Agency：JST）の戦略的創造研究推進事業（Strategic Basic Research Programs）および創発的研究支援事業（Fusion Oriented Research for Disruptive Science and Technology）、国立研究開発法人日本医療研究開発機構（Japan Agency for Medical Research and Development：AMED）の革新的先端研究開発支援事業（Advanced Research and Development Programs for Medical Innovation）が含まれる。
本方針は、これらの助成を受けた研究成果の論文を迅速にオープンアクセス化することを求めるものであり、学術界に大きな波紋を投げかけている。この義務は、2025年度以降に採択された研究成果に適用されるため、2026年までに各研究機関と大学等の研究者は対応を迫られることとなる。
2025年1月27日、ジャパンリンクセンターにおいて「対話・共創の場」が開催され、「即時オープンアクセス（OA）方針の推進に向けての課題共有」をテーマとするセッションが実施された。本セッションにおいて、「即時オープンアクセス時代における研究者の言語生活」と題した基調講演が行われた（横山、2025）。その内容は、横山・石川・井田・相澤（2025印刷中、プレプリントあり）を踏まえたうえで、さらなる視点やトピックを提供するものであった。以下、この基調講演の内容を参考にしながら現時点での即時OAへの対応状況について解説し、今後の展望に関する考察と新たな提言を示す。