プレプリント / バージョン2

プロテオームタンパク質のアミノ酸組成分布は細胞のアミノ酸組成と相互に制約し狭い範囲に収束している可能性がある

##article.authors##

DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.95

キーワード:

アミノ酸組成、 プロテオーム、 収束

抄録

 タンパク質は20種類のアミノ酸により構成され、そのアミノ酸組成は多様であることが知られている。さらに今日ではプロテオーム全体のタンパク質のアミノ酸組成について検討することが可能となっており、複数の生物プロテオーム間での組成の差についてはすでにいくつもの報告がなされている。しかし、各生物のプロテオーム内でタンパク質のアミノ酸組成がどのように分布しているかということについては全く報告されていなかった。

 今回、公開されているヒトと大腸菌のプロテオームの情報をもとに、プロテオームタンパク質のアミノ酸組成分布の検討を行った。その結果、3つのことが明らかとなった。第1に、検討した全てのアミノ酸についてその個々の組成分布は典型的な釣鐘型分布を呈していた。第2に、各プロテオームの分布の平均値はヒト、大腸菌それぞれの細胞のアミノ酸組成の実測値と相関していた。第3に、各生物のタンパク質組成と各平均との距離の分布を検討したところ、各生物においてこれらの分布はほとんど同一形状を呈し、その大半が平均に近い中央の狭い範囲に集中していた。

 タンパク質合成の最大の原料は細胞内タンパク質であること、そして細胞内タンパク質はプロテオームのタンパク質によって構成されていることを考慮すると、今回認められたプロテオームアミノ酸組成の釣鐘型分布、組成平均値と細胞実測組成との相関、およびプロテオームアミノ酸組成の中央集中分布は、プロテオームタンパク質のアミノ酸組成が細胞内タンパク質のアミノ酸組成と相互に制約し、比較的狭い範囲に収束している状態にあることを示唆すると考えられた。

ダウンロード *前日までの集計結果を表示します

ダウンロード実績データは、公開の翌日以降に作成されます。

引用文献

Tekaia, F., & Yeramian, E. (2006). Evolution of proteomes: Fundamental signatures and global trends in amino acid compositions. BMC Genomics, 7. https://doi.org/10.1186/1471-2164-7-307

Brüne, D., Andrade-Navarro, M. A., & Mier, P. (2018). Proteome-wide comparison between the amino acid composition of domains and linkers. BMC Research Notes, 11(1). https://doi.org/10.1186/s13104-018-3221-0

Kreil, D. P. (2001). Identification of thermophilic species by the amino acid compositions deduced from their genomes. Nucleic Acids Research, 29(7), 1608–1615. https://doi.org/10.1093/nar/29.7.1608

Moura, A., Savageau, M. A., & Alves, R. (2013). Relative Amino Acid Composition Signatures of Organisms and Environments. PLoS ONE, 8(10). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0077319

Schmidt, A., Rzanny, M., Schmidt, A., Hagen, M., Schütze, E., & Kothe, E. (2012). GC content-independent amino acid patterns in Bacteria and Archaea. Journal of Basic Microbiology, 52(2), 195–205. https://doi.org/10.1002/jobm.201100067

Genome assembly GRCh38.p14 on the NCBI website. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/data-hub/genome/GCF_000001405.40/

Genome assembly ASM584v2 on the NCBI website. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/data-hub/genome/GCF_000005845.2/

Youtube動画「遺伝暗号縮重の意味」(7:25付近〜「おまけ」にて解説)https://www.youtube.com/watch?v=GgfigZIc8q8

Sorimachi, K. (1999). Evolutionary changes reflected by the cellular amino acid composition. Amino Acids, 17(2), 207–226. https://doi.org/10.1007/BF01361883

Website. “Comparisons of amino acid compositions between proteins x and y.” http://www0.cs.ucl.ac.uk/staff/L.McGuffin/aminocomp.html

日本食品標準成分表2020年版(八訂)https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

Genome assembly GCA_000002765 on the NCBI website. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/data-hub/genome/GCA_000002765.3/

Genome assembly ASM893130v1 on the NCBI website. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/data-hub/genome/GCF_008931305.1/

ダウンロード

公開済


投稿日時: 2022-06-17 21:28:26 UTC

公開日時: 2022-06-21 05:55:18 UTC — 2022-06-30 07:46:08 UTCに更新

バージョン

改版理由

英文要約について英文校正が終了したためそれに合わせて改版しました。
研究分野
生物学・生命科学・基礎医学