Non-neutrality of consumption tax on businesses' choice of production system
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.937Keywords:
consumption tax, value-added tax, social insurance contribution, substitution of labor and capital, tax neutralityAbstract
消費税は企業行動に中立であると広く信じられている。その説明は税の帰着の理論に基づく。すなわち、消費税制度が予定する通りに税額が価格に上乗せされれば、企業に税は帰着せず、したがって企業に税の負担はないので、それを回避する行動をとる必要はない、よって中立である、という説明である。この説明は、税の帰着のみが税負担であると暗に前提している。帰着概念は税制変更前後の厚生の変化を税負担と捉えるものであるから、この説明の中立性は、消費税の導入前後で企業行動が変化しないと説明するものである。
これに対して本稿では、消費税の導入ではなく、消費税が存在するという状態が企業行動に非中立な影響を与えることを、生産者行動の理論を用いて形式的に示す。企業は、消費税の存在の下で継続的に、労働を資本で代替するよう促される。比較静学に基づく帰着概念では原理的に捉えにくいこの非中立性は、我が国経済で30年以上に渡って続いてきた賃金抑制と低成長をよく説明する。
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Submitted: 2024-10-17 07:51:47 UTC
Published: 2024-10-21 10:58:19 UTC
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Kazuto Tominaga
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