戦略的調達の逆機能

筋の悪い事業戦略の延命

抄録

調達活動は一般的に、納期やコストの管理といった単純で定型的な業務であると想定されており、先行する学術研究においてもそうであった。しかし、調達は事業戦略検討の要件や要素に影響を与える戦略的活動も行っている。戦略的調達活動は、新資材やその新資材を使用した新製品によるイノベーションを誘発する形でイノベーションを主導する。これは戦略的調達活動のポジティブな側面である。しかし、筆者は戦略的調達がマイナスに作用するケースに遭遇した。そのケースとは、太陽電池業界における日系メーカーである。日系メーカー3社では、調達の戦略的活動が、各社の事業戦略の根幹であった製品の差別化を弱める一方で、一定のコスト削減効果をもたらし、事業戦略を抜本的に見直すことなく事業の延命に寄与していた。つまり、調達における戦略的活動は、筋の悪い事業戦略を延命させるという形でマイナスに作用したのである。したがって、逆機能が発生している場合には、部分最適で実施されている戦略的調達活動を中断し、事業戦略そのものを抜本的に見直す必要がある。