国際的な戦略的提携におけるナレッジ・マネジメント

－知識適応の修正能力の構築に向けて－

抄録

本論文は，国際的な戦略的提携およびナレッジ・マネジメントの先行研究を検討し，特に知識移転の拡散・吸収能力および知識適応の知識修正の重要性を体系的に整理してきた。

国際的な戦略的提携とは，リソースの共有を通じて相互の優位性を創出することを目的とした企業の戦略的行動である（Gulati 1995; Kale & Singh 2009; Lee 2021a）。国際的な戦略的提携をめぐる先行研究では，事業を成功させるために，経営資源の補完性(Kale & Singh, 2009)，専門的提携部署(Kale & Singh, 2009)，企業文化の相違（Elmuti & Kathawala, 2001），ソーシャル・キャピタル(Chung et al., 2000)，コミットメントという要因が重要であることを指摘されている（Dyer & Singh, 1998; Kale & Singh, 2009; Schreiner et al., 2009)。

ナレッジ・マネジメントには，知識移転（Minbaeva et al., 2003）と知識適応（Pak et al., 2015）という二つの重要なフェーズがある。知識移転とは，送り手と受け手の間で行われる知識の交換と学習のプロセスを意味する（Minbaeva, 2007）。先行研究では，従業員のモチベーション，集団的なトレーニング，効果的なコミュニケーション，組織内の対人関係性など，知識移転に好ましい影響を与える要因が強調されている（Argote & Fahrenkopf, 2016; Dhanaraji, 2004; Liang et al.）さらに，先行研究では，知識移転における拡散能力と吸収能力の重要性を指摘していた（Lee, 2021b; Minbaeva et al., 2018）。

また，先行研究が提唱している概念を踏まえ，本論文では，専門知識や産業経験」，「公式・非公式なフィードバック・チャネル」，「社内外の経営資源の活用」，「学習や人材訓練」，「組織の改変や支援体制の構築」という評価項目を提案し，知識適応における知識の修正能力を構築することを試みた。