計画の失敗に関係する心理

企業の業務データを用いた探索的研究

抄録

本研究では、計画の遅延（計画錯誤）と、自己効力感、自信過剰、先延ばしなどの心理的要因との関係を分析した。一般的に、自己効力感はパフォーマンスの結果に肯定的な影響を与えるが、自信過剰のように計画が不正確な場合はマイナスの影響を与えることがある。先行研究では、このような現象は人が複雑なタスクを実行するときにより深刻に発生ことが示されている。企業の現場での活動データを用いた実証実験では、計画誤謬と自己効力感との間に有意かつ正の相関関係が見られた。特に自己効力感の下位因子である社会的自己効力感、対人関係との関連が非常に強かった。この結果から、計画錯誤の研究に自己効力感との関連性を利用する可能性が示唆されたといえる。それだけでなく、一般的に計画的な行動を統制する時間管理よりも自己効力感のほうが計画錯誤と強く関連している事例も確認できた。