等方空間に適用される直交座標系を使用して分析した鏡映反転の詳細な物理的プロセス

抄録

鏡像問題は、これまでにそれぞれが最終理論であると主張する様々な理論が提唱されているものの、未だに定説が確立されていない問題となっている。その理由は第一に、この現象が物理的プロセスと知覚、あるいはより広く認知のプロセスの両者に関わっているからであり、両者の境界を確定することが困難であるからである。著者は先般の論文において、等方空間と異方空間の相違という概念を基礎に据えることで、この問題に対する包括的な理論を提唱した。ただその際、物理的プロセスに関しては、認知プロセスに比べてやや明確さを欠いていたので、物理的プロセスについてはさらに明解な分析が必要であった。今回は、反射光学系の構成要素をなす眼球に代えて、カメラ機構内に形成される実像に、直交座標系を適用することでプロセスを分析し、鏡映反転のメカニズムを解明することに成功した。従来の研究は事実上すべて光学系を示す光路図または描画を利用して考察され、一部の研究では虚像と物体に適用した直交座標系を利用していたが、有意な結果がもたらされたとは考えらえない。このことは、視覚像に関係する諸問題の分析にあたって虚像のみに頼ることの危うさを示すものと言える。これは単に視覚の問題を超えた意義を持っている。