プレプリント / バージョン1

インターネットアーカイブによるデジタル貸出のフェア・ユース該当性に関する地裁判決の概要

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DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.402

キーワード:

著作権、 フェア・ユース、 Controlled Digital Lending、 インターネットアーカイブ、 図書館

抄録

本稿は、インターネットアーカイブ(IA)によるデジタル貸出サービスのフェア・ユース該当性が争われた事件のニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所による判断を紹介するものである。IAは、1対1の「所有と貸出の比率」を最も重要な構成要素とする「Controlled Digital Lending」(CDL)という考え方に基づいて、IAがスキャンした書籍のデジタルコピーを一定期間、冊数を限定して、オンラインでデジタルコピーを利用可能にするサービスを提供していた。裁判所は、①IAのサービスは「変容的利用」ではない、②IAはサービスを通じて寄付や支払いを受けており、非営利とは言えない、③そもそも1対1の「所有と貸出の比率」を守っていない、などの理由から、IAのサービスは、出版社による図書館向けの電子書籍ライセンスの市場に損害を与えるものであるとして、フェア・ユースは認められないと判示した。IAのサービスは、CDLの最も重要な要素である「所有と貸出の比率」が守られていなかっただけでなく、ライセンスが存在する書籍は対象外にするという、CDLの理論を精緻化した文書が示した要件も守られていなかったことから、フェア・ユースが認められなかったことは妥当だろう。一方、図書館向けライセンスが存在しない書籍のデジタル貸出について、本判決では示されておらず、本来のCDLのフェア・ユース該当性が否定されたわけではないと考える。

利益相反に関する開示

開示すべき利益相反はない

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引用文献

小山貞夫編著『英米法律語辞典』(研究社、2011年)

山本隆司「外国著作権法 アメリカ編」著作権情報センター(2018)(https://www.cric.or.jp/db/world/america.html)

村井麻衣子「フェア・ユースにおける市場の失敗理論と変容的利用の理論(2)~(4):日本著作権法の制限規定に対する示唆」知的財産法政策学研究46号(2015年)~48号(2016年)

David R. Hansen & Kyle K. Courtney, A White Paper on Controlled Digital Lending of Library Books, LAWARXIV 1 (2018), https://doi.org/10.31228/osf.io/7fdyr.

鈴木康平「Controlled Digital Lendingのフェア・ユース該当性と日本法への示唆」情報ネットワーク・ローレビュー20巻(2021年)

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公開済


投稿日時: 2023-06-06 10:58:07 UTC

公開日時: 2023-06-08 01:35:16 UTC
研究分野
法学・政治学