卒業式や入学式等における新型コロナウイルスの感染リスク評価

抄録

本研究では、卒業式や入学式等における新型コロナウイルスの感染リスクや対策の効果を評価することを目的として、865人が参加する仮想の卒業式を設定し、歌唱、卒業証書授与、式辞等の卒業式における各種イベント条件を検討、マスク着用等の対策の効果を考慮した感染リスク評価モデルを構築した。また、卒業式のリスクを相対的に評価するため、同じコンセプトで入学式を想定した感染リスク評価を構築して比較を実施した。

本研究で想定した条件においては、卒業式に1名の無症状感染者（無症状の感染性保有者）が参加した場合、平均的な感染リスクは、マスク着用等の対策をしない場合で0.00004（10万人あたり4.0人、865人が参加する卒業式では0.035人）、また、入学式に1名の無症状感染者が参加した場合の平均的な感染リスクは、対策をしない場合で0.000012（10万人あたり1.2人、865人が参加する場合の想定感染者数は0.010人）であり、卒業式のほうが高いことが確認された。これは、卒業証書授与の様な対面・近距離での会話の有無および式典全体の所要時間の差異等に起因すると考えられる。卒業式における感染リスクが高いイベントは歌唱および卒業証書授与、入学式では歌唱であった。

また、卒業式において、歌唱時のみマスクを着用する対策をした場合の感染リスクは、0.000022人（10万人あたり2.2人、865人が参加する場合の想定感染者数は0.019人）であり、歌唱時に不織布マスクを着用することで、参加者の平均的な感染リスクが約45%削減できることが確認された。卒業式や入学式における感染リスク自体は、対策なしの条件においても低いものの、市中感染率が上昇した場合等においては、様々な対策の組み合わせが有効となろう。