シナヌマエビにおける環境色に対応した体色変化の検証

抄録

背景同化は自身の体色を背景に合わせることで捕食者からの視覚的検出を避ける隠蔽的擬態の一種であり、体色変化はこれを動的に実現するための主要な手段となっている。甲殻類では、様々な外的要因によって短期的および長期的に体色が変化することが知られており、特に周囲の環境の明暗や色相の影響が報告されている。しかしながら、体色変化のパターンを調べた研究の多くは養殖や水産利用への応用を目的としており、その適応的意義については知見が不足している。本研究では、淡水性の甲殻類であるカワリヌマエビ属の体色変化が隠蔽的擬態の機能を持つという仮説を立て、カワリヌマエビ類の体色が周囲の環境色と同系色に変化するかを定量的に検討した。DNAバーコーディングによって同定されたシナヌマエビを用いて、赤、緑、青、白の4色環境で7日間飼育し、処理前後の体色の変化をRGB成分の輝度値を用いて評価した。その結果、赤、緑、青色環境では、飼育環境の色に対応する成分の輝度値の減少率が最も小さくなる傾向が認められた。この結果は、シナヌマエビが環境色と同系色に体色を変化させる能力を有することを示唆し、隠蔽的擬態としての機能を支持するものである。本研究は、カワリヌマエビ類における体色変化の適応的意義と生理的基盤の解明に向けた基礎的知見を提供するものである。