起業家体験プログラムにおける起業意思と諸要因の関係

Startup Weekendプログラム参加者を対象にした分析方法の探索

抄録

本研究は、大学生版 Startup Weekend（SW）に参加した学生の起業意思の形成過程を、参加前後の心理的変数との関連から実証的に検討したものである。先行研究では、起業意思の決定要因として、計画的行動理論に基づく起業態度、自己効力感、主観的規範などが挙げられてきたが、教育プログラムの内容や条件を統制しながらこれらを切り分ける研究は少ない。

本研究では、2022～2024年に京都・東京・大阪で実施された大学生向けSWの参加者90名を対象に、事前・事後およびプログラム中のフロー経験を含む心理的アンケートを収集し、重回帰分析と共分散構造分析を用いて変数間の関係を解析した。

主な結果は以下の通りである：

プログラム参加前の起業態度が、参加後の起業意思の最も強力な予測因子であり（パス係数=0.80）、参加後の起業意思の分散の約70%を説明した。

自己効力感やローカス・オブ・コントロールといった基礎的個人要因は、直接的に起業意思を高めるのではなく、起業態度を媒介して間接的に影響していた。

プログラム中のフロー経験も事後の起業意思に統計的に有意な影響（パス係数=0.11）を与えた。

方法論的には、重回帰分析が多重共線性の影響で真の関係を捉えにくい点を指摘し、パス係数に加えて重相関係数平方の検討を組み込む共分散構造分析の有効性を提示した。

本研究は、短期型PBL形式の起業家教育における心理的メカニズムの解明に貢献している。