大学での地域連携型授業を通じたアイヌ文化学習に関する一考察
文化への関心から地域における当事者性まで
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.1298キーワード:
地域連携型授業、 アイヌ文化、 当事者性、 「楽しさ」、 媒介者抄録
本稿は、大学での地域連携型PBL授業の実践報告として、学生がアイヌ文化への表層的な関心を、いかに地域 社会における「当事者性」へ転化させるかを考察したものである。従来の教育現場でのアイヌ文化への注目は、 時にアイヌ民族の他者化を強める効果も生んできた。その課題を乗り越えるため、本実践では文献・体験学習 から、地域での展示会開催まで段階的に学びを移行させる設計をとった。その結果、学生たちは歴史的・構造 的問題の難しさを認識しながらも、学習過程で生まれる「楽しさ」を通じてアイヌ文化活動を地域において再 現する媒介者としての当事者性を獲得するに至ったと考察した。
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投稿日時: 2025-06-14 07:38:26 UTC
公開日時: 2025-06-17 09:55:38 UTC
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