プレプリント / バージョン1

交通事故における死亡リスクの多面的評価:PTDほぼ0群に対するRTSと個体要因の分析

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  • 吉井, 勝司 フリーランス

DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.1207

キーワード:

RTS、 PTD、 交通事故、 生存率モデル、 心理的ストレス

抄録

本研究では、交通事故における死亡リスクを外傷だけでなく、生命兆候(RTS)や個体要因(年齢・既往歴)を含む多面的視点から評価した。特に、致死的外傷ではないにもかかわらず死亡に至った症例群(PTDほぼ0群)に着目し、外傷以外の要因の抽出を試みた。
死亡リスクの説明力を比較するために複数のロジスティック回帰モデルを構築した結果、ISS単独モデルでは再現率0.147・Pseudo R²=0.335と限定的であったが、RTSおよび年齢スコアを加えたモデルで再現率0.573・Pseudo R²=0.557に向上した。さらに年齢²×既往歴数²の交互作用を加えたモデルでは、再現率が0.874、Pseudo R²が0.640となり、高齢かつ既往歴を複数持つ者が死亡に至りやすいことが示された。
またRTSの悪化は、衝突方向・時刻・天候・アルコール使用など、心理的・環境的な因子と関連しており、RTSが単なる生理学的指標にとどまらず、事故時の“内的ストレス”を反映する可能性があると考えられる。
これらの結果から、今後の交通事故対策においては、外傷の低減だけでなく、事故時の不安・ストレス反応の軽減や、既往歴を有する高齢者への個別対応といった、新たな多面的安全戦略が求められる。

利益相反に関する開示

本研究に関連する利益相反はありません。

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引用文献

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公開済


投稿日時: 2025-04-25 04:54:51 UTC

公開日時: 2025-05-07 06:24:46 UTC
研究分野
一般工学・総合工学