新型コロナウイルス・ワクチンの接種者と未接種者による独裁者ゲーム実験

抄録

本研究では、2022年1月から2月に、新型コロナウイルス・ワクチンの接種者（N=796）と未接種者（N=782）を対象に金銭的報酬で動機付けた独裁者ゲーム実験を行い、接種者と未接種者それぞれの「内集団びいき」「内集団バイアス」「外集団バイアス」を測定した。本研究の内集団びいきとは、自分と同じ接種歴を持つ人への配分額と自分と異なる接種歴の人への配分額の差を指す。また、内集団バイアスは自分と同じ接種歴の人への配分額と匿名の人への配分額の差を、外集団バイアスは自分と異なる接種歴の人への配分額と匿名の人への配分額の差を指す。分析から以下の結果が得られた。第一に、接種者グループで内集団びいきとその背景にある外集団バイアスが強く観察されたが、未接種者グループでは観察されなかった。第二に、未接種者グループでは外集団バイアスが仮説とは真逆の方向で観察され、未接種者は平均的に自分とは異なる接種者に対して多くの金額を配分することが分かった。第三に、未接種者グループの内「できるならワクチン接種を受けたいが、健康上の理由などで受けられないから」という理由で接種を受けなかった未接種者の間では、上記のように外集団バイアスや内集団びいきが仮説とは逆の方向で観察された。一方、「そもそもワクチン接種を受けたくないから」という理由で接種を受けなかった未接種者では、内集団びいきが仮説通りの方向性で観察され、その未接種者は自分と同じ未接種者に対して多くの金額を配分することが分かった。