日本語版拡散連想課題の開発と妥当性

抄録

拡散的思考(DT)は創造的な潜在能力として研究されてきたが、その採点には膨大な作業が必要であることが問題視されてきた。そこで最近注目されているのが、意味的距離の計算による自動採点である。既存のDTテストを簡略化した拡散連想課題 (DAT)は、短時間で取り組むことができる課題で、スコアを自動算出することが可能である。本研究では、DATの日本語版（DAT-J）を開発し、その妥当性を検証することを目的とした。DATの得点計算のために日本語コーパスから得られた12の候補単語ベクトルを用意し、DT課題としてのDAT-Jの妥当性と信頼性を検討する3つの調査を実施した。調査1では、95名の芸術専攻の学生がDAT-Jと創造性関連尺度を含む質問紙調査にウェブ上で回答した。調査1では、DAT-Jが自動採点のために不適切な回答を含む可能性があることが明らかになったため、DAT-Jの教示文を修正し、不適切な回答を検証するウェブアプリケーションを開発した。調査2では、358人の学生が修正版のDAT-J、既存のDT課題、質問紙調査に参加し、2週間後にDAT-Jの再検査を行った。調査3では、DAT-Jの回答を手書き、ウェブアプリ、検証付きウェブアプリで比較する実験を行った。3つの調査結果から、DAT-Jの基本的な妥当性と信頼性が実証され、DTを評価するツールとしてのDAT-Jの有用性が示された。さらに、DAT-Jの回答形式はDAT得点に顕著な影響を与えないことも判明した。最後に、DAT-Jの限界と今後の測定精度の改善について議論した。