2026年度診療報酬改定は病院を経営する医療法人の赤字を解消するか
首都圏の決算届を用いた追跡研究(2023〜2025年決算)
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.6924キーワード:
医療法人、 病院経営、 事業赤字、 診療報酬改定、 事業報告書、 地域医療、 医療政策抄録
目的 病院を経営する医療法人について、2026年度診療報酬改定の直前にあたる2023〜2025年決算の事業赤字の広がりと内訳を示し、改定によって赤字が以前の水準に戻るかを試算する。
方法 東京都、神奈川県(横浜市所管分)、埼玉県、千葉県(千葉市所管分)が医療法にもとづき閲覧に供する決算届(事業報告書等)を転記し、2023〜2025年に決算日のある9,894法人(17,251法人年)を得た。保険医療機関の指定一覧と法人名で突合し、病院を持つ法人を特定して、病床の規模と種類を付けた。事業赤字(本来業務事業費用が本来業務事業収益を上回る)の割合を先行研究の2007〜2017年度の値と並べ、同一法人の前年比と収益・費用の伸びを求めた。2026年度改定は、改定の内訳と施設類型別の配分を病院の収益に対する率に直して当てはめ、事業赤字の割合を2019年度の水準に戻すのに要る利益率の改善幅と比べた。指定一覧と廃止の一覧から病院と診療所の新規・引き継ぎ・廃止を数えた。
結果 病院を持つ法人597(4都県の病院を持つ医療法人851の70%)のうち、最新の届出で事業赤字の法人は60.5%(95%信頼区間56.5〜64.3)だった。東京都では2017年度の42.2%に対し、2025年決算で65.1%だった。同じ法人281では、事業赤字の割合が55.9%から64.8%に上がった(差8.9ポイント、95%信頼区間3.1〜14.7)。収益の伸びの中央値は0.1%、費用は1.8%だった。事業赤字の割合は病床の規模と種類で明らかな差がなく(各群は少数)、債務超過は99床以下で13.0%、400床以上で2.5%だった。改定による病院の収益の引き上げは2.87%と試算され、うち2.00%は賃上げ・物価・食費光熱の分で、残りは0.87%だった。事業赤字の割合を2019年度の水準(36.6%)に戻すには収益の3.8%(95%信頼区間2.8〜4.7)の改善が要り、改定の残りの分で55.4%、費用が増えないと置いた上限でも40.4%にとどまった。12か月間に病院は1,577のうち11が閉じ、新規は1だった。医科の診療所は603が閉じ、921が開いた。
結論 首都圏の病院を持つ医療法人の6割が事業赤字で、悪化は病床の規模や種類にかかわらず広く見られた。2026年度改定の賃上げ・物価の分は1年分の費用の増加に見合う幅で、すでに開いた差を埋める分は必要な幅の4分の1にとどまる。病院は閉じても新たに補われず、病院の赤字は地域の医療の供給に直結する。改定の後も法人単位で財務を追い続ける必要がある。
利益相反に関する開示
著者は、医療機関の経営支援を行う株式会社セントラルメディエンスに所属し、医療法人総心会および医療法人博和会の運営に関与している。これらの医療法人はいずれも本研究の対象地域(東京都、神奈川県横浜市、埼玉県、千葉県千葉市)の外にあり、本研究の解析対象には含まれていない(対象データには、これらとは別の同名の法人が含まれる)。本研究で用いた決算届の収集と転記は、同社が行った。以上の関係は、本研究の計画、解析および結論に影響していない。本研究に対する外部からの研究資金はない。ダウンロード *前日までの集計結果を表示します
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投稿日時: 2026-10-23 06:20:04 UTC
公開日時: 2026-10-30 02:25:37 UTC
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中川, 隆太郎
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