高度な学習コストを必要とする製品事業におけるシェア獲得戦略

医療機器業界における国産消化器内視鏡事業のケース研究

抄録

　本報告では、学習コストが高い製品ビジネスにおけるシェア獲得戦略を探るため、特に消化器内視鏡事業を対象とした調査を実施した。消化器内視鏡製品は高い技術力が要求される他、国内企業が寡占状態にあり、今回の調査に適していると考えた。
　オリンパスはこの事業でトップシェアを占めており、特に教育機関である大学との関係が強いことが明らかとなった。その特徴として、内視鏡の教育機関である大学への入り込みがこの分野での寡占化につながっていると考えられた。一方、オリンパスの後を追う富士フイルムは、開業医を中心とした真逆の戦略をとっており、これに価格戦略を組み合わせていた。
　しかし、シェアはオリンパスの方が高いままであったことから、学習コストの高いビジネスにおいては、価格戦略によらない意思決定メカニズムが存在し、その本質が学習プロセスを占有することにあることが示唆された。