製品開発における実験の観点についての予備的考察

小売り産業の製品開発事例から

抄録

本稿では、商品開発において近年注目されている「実験」について、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析する。これまでの実験に関する研究では、2つの視点があった。一つは、実験に必要な組織風土を明らかにする研究である。第二に、実験に用いられるツールが実験の効果をどのように高めるかを明らかにした研究がある。しかし、実験に使用するツールが組織風土に与える影響について検討した研究はほとんどない。そこで、本研究では、実験に用いられるツールが組織風土に及ぼす影響について議論する必要があると主張する。なぜなら、実験に用いられるツールは、実験そのものだけでなく、実験を行う主体にも影響を与えるからである。
実験ツールが組織風土に及ぼす影響を検討した結果、2つの仮説が生まれた。
1つ目は、実験ツールがあることで、1つの実験を実施するのに必要なコストと時間が削減され、組織のメンバーは実験を実施することに積極的になるというものである。もう1つは、実験ツールの存在が、組織に対して実験実施のプレッシャーを与えることである。