江戸・明治期における「吉原細見」の基礎的研究
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https://doi.org/10.51094/jxiv.663キーワード:
吉原遊廓、 吉原細見、 遊女評判記、 評判記抄録
本稿は、吉原遊廓を研究するに際して、その基礎史料となる「吉原細見」について大きく二つの問題について取り上げた。その問題を扱う前提として、細見の定義について第一章で考察をした。筆者は、先行研究では研究者によって種々の説明がされてきたものをまとめ、歴史学のみならず、他分野の研究も参照しながら新たな定義を規定した。
本稿で取り上げた二つの問題とは、一つは「読み方の問題」=史料学的問題である。細見の定義とも被るが、遊女評判記との差異をいかに扱うか、当代史料を用いて、当代人にとっての細見が何であったのかについて第二章で考察した。その結果、先行研究において評判記と連続的なものと考えられていた細見は、両者に相関関係はありながらも連続的なものであるとの考えに疑義を呈した。もう一つの問題は、事実性をめぐる問題である。細見は、既存の研究においてその正確性の議論をしないまま扱われてきた。細見は、実用性に長けていることから正確性を疑ってこなかったが、宮本由紀子が指摘している通り、明治期にはコピー品が存在する。それが江戸期細見においてはどうであったのかについて山東京伝の黄表紙を基に第三章で考察を行った。
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投稿日時: 2024-04-05 12:31:15 UTC
公開日時: 2024-04-11 00:28:25 UTC
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倉金, 宙本
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