DOI: https://www.jsme.or.jp/kaisi/1255-14/
微生物遊泳と壁の協奏現象:個と集団の制御
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.379キーワード:
アクティブマター、 微生物、 集団運動、 微小流体力学、 バクテリア、 アクティブ乱流、 トポロジカル欠陥抄録
顕微鏡下で懸命に泳ぎ回る微生物の姿は、古くから多くの人々を魅了してきた(少なくとも筆者は大好きである)。たとえば、モデル生物として使われる大腸菌や枯草菌などの典型的なバクテリアの場合、体長は約2〜5 µm、直径は1 µm弱、遊泳速度は20 µm/s程度であり、レイノルズ数は10-5程度に相当する。このような低レイノルズ数の世界で生きるバクテリアなどの微生物の挙動は、線形のStokes方程式により記述できる。
低レイノルズ数の線形な世界に、数理や工学の観点から面白いことがあるのか疑問に思う読者もいるかも知れない。しかし、このような線形の流体方程式に支配される世界においても、たとえ単純であっても解けない状況や、バクテリアのアクティビティに由来する追加の非線形性によりカオス的な挙動が現れることがある。そのため、微生物の遊泳挙動は見た目に面白いだけではなく、理論的にも興味深い構造をはらんでいる。
とりわけ、境界や障害物の存在下におけるバクテリアの遊泳挙動には、一匹レベルでも集団レベルでも特異な振る舞いが現れる。バクテリアの生息環境には、土壌などの多孔質環境やホスト生物の体表面など、数多くの境界や障害物が存在する。バクテリアはそのような環境中を探索し、ときには表面に接着してバイオフィルムを形成する。そのため境界との相互作用の理解は、数理的観点のみならず、バクテリアの生存戦略の理解や工学応用の観点からも本質的に重要である。
そこで本稿では、微生物の中でも比較的単純な遊泳挙動を示す大腸菌や枯草菌などの典型的な遊泳バクテリアに着目し、これらと壁や障害物との相互作用の中で現れる挙動について概説する。具体的には、1)擬2次元に閉じ込めた一匹のバクテリアの遊泳における流体相互作用の特異性、2)遊泳バクテリアが集団で示すアクティブ乱流の微細な柱による自己組織化、の2点について紹介する。
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投稿日時: 2023-05-16 00:24:48 UTC
公開日時: 2023-05-18 01:11:06 UTC
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