無形文化遺産と持続可能な開発の関係性をめぐる若干の考察

抄録

2015年9月25日、第70回国連総会において、「我々の世界を変革する：持続可能な開発のための2030アジェンダ（Transforming Our World: The 2030 Agenda for Sustainable Development）」が採択された。世界を持続可能かつ強靭な道筋に移行させるための道標として編まれたこのアジェンダは、周知の通り、持続可能な開発目標（Sustainable Development Goals）の達成を通じて、世界全体の経済・社会・環境の持続可能性を統合しようとする試みである。課題の喫緊性を示唆するかのように、SDGsの達成へ向けた取り組みは全世界で始まっており、我が国でも、2016年5月20日の「SDGs推進本部第一回会合」を嚆矢としてその国家戦略が第一歩を踏み出している。SDGsの達成期限が2030年に設定されていることを踏まえると、現時点の進捗状況を評価することは拙速に過ぎるであろうが、他方、SDGsの達成に無形文化遺産がどのような役割を果たしうるかという議論は、少なくとも我が国においてはまだ十分に行われているとは言い難いのが現状である。そこで本論では、ユネスコの関連動向を整理する。