沿岸漂着ゴミ由来のバイオメタノールによる 沿岸域水産施設への熱・電力・燃料併給の可能性の検討

第２報；CO２削減効果、経済性評価の追加

抄録

筆者はこれまで、海洋ゴミの回収後プロセスに焦点を当てたエネルギー・資源フローモデルを開発・発表してきた。これらのモデルは、エネルギーシステムを用いた事業化の技術的・経済的実現可能性を検証するために設計されたものである。先行研究の一つでは、漂流発泡スチロールからのスチレン油化装置とコージェネレーションシステム（CGS）を組み合わせたマイクログリッドシステムの経済的実現可能性を検討した。本研究では、木質バイオマスで実績のある「バイオマスガス化炉・メタノール合成炉」技術に焦点を当てる。このメタノール合成炉を漂流海洋ゴミに適用できれば、沿岸施設へのエネルギー供給の選択肢となる。本研究では、海洋ゴミなどの沿岸バイオマスから得られるバイオメタノールを用いたメタノール合成炉、CGS、燃料供給システムのエネルギーフローを簡便に計算できるエネルギーフローモデルを開発した。海洋ゴミのみを考慮しただけではバイオマス量が不足するため、漁港や水産加工場から廃棄される魚や食品残渣も評価対象とした。さらに、このバイオメタノールは廃食用油と混合することでバイオディーゼル燃料（FAME）を合成することができ、船舶燃料を含む様々な用途への応用が期待されます。このエネルギーモデルを用いて、沿岸漁業施設（漁港、水産加工場、漁船）のエネルギー自給ポテンシャルを算出しました。計算結果は、バイオマス量の変化に応じてエネルギー自給率を算出しました。しかし、電力、熱、燃料の3つの供給源を同時に自給することは困難であることがわかりました。さらに、CGSの最適な規模を決定する最適化モデルを開発し、沿岸漁業施設のエネルギー自給率向上の可能性を示しました。