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DOI: https://doi.org/10.18910/94725
プレプリント / バージョン1

「かわいい」の複合語に関する小史

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DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.194

キーワード:

かわいい、 語源研究、 日本文化

抄録

「かわいい」という言葉は,英語のcute, lovely, adorableにおよそ対応した意味を持ち,現代の日本で幅広く使われる。この言葉は単独で使われるだけでなく,「ださかわいい」「キモかわいい」というように相反する要素をつなげた複合形容詞としても使われる。本研究では,これらの複合語がいつから登場し,どのように変遷してきたかについて,新聞記事データベースに基づいて調べた。「かわいい」という言葉は,1970年代後半までは子どもや動物などのあどけないものに対して使われていたが,1980年頃から対象が急速に拡大し1990年代後半になって「ださかわいい」「キモかわいい」というネガティブな形容詞との複合語表現が生まれた。2000年代後半からは,ファッションや女性の外見をカテゴライズするために「かわいい」複合語はさらに増え,「大人カワイイ」「エロカワイイ」といった言葉が登場した。さまざまな「かわいい」複合語で表される感情をどのくらい感じるかについてのアンケート調査から,これらの複合語は,快―不快,外面―内面という2軸で整理でき,外面的なかわいさ,内面的なかわいさ,不快な要素を含むかわいさの3つに分類できた。

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投稿日時: 2022-10-27 06:19:28 UTC

公開日時: 2022-11-02 02:23:10 UTC
研究分野
心理学・教育学