新吉原規定証文の改正についての一考察
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https://doi.org/10.51094/jxiv.1623キーワード:
新吉原規定証文、 新吉原、 吉原遊廓、 秩序抄録
江戸時代の新吉原遊廓において、秩序維持の根幹を担っていたのが「新吉原規定証文」である。これは遊女屋・茶屋・遊女らの関係性や規範を定めた自治的な法文書であり、寛政七(一七九五)年に制定された証文が長く用いられていた。しかし、時代の変化とともにその内容は現実との乖離を見せ始め、とりわけ天保改革期には、岡場所の統合や遊女屋の増加によって秩序が混乱し、証文の改正が急務となった。
新吉原側は幕府に対して証文改正の認可を求めたが、茶屋と遊女屋の利害対立や幕府の消極的姿勢により、正式な改正は実現しなかった。ここで注目されるのが天保規定である。本稿は天保期に南町奉行所に提出されたものについて、特に考察を促し、そこにある史料内容から、先行研究と異なっていずれの規定証文も有効であったと結論付けた。
規定証文の有効性は幕府側と新吉原の関係性を考えるうえで重大な視座になり得ることを本稿は提示した。
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引用文献
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投稿日時: 2025-10-08 03:17:20 UTC
公開日時: 2025-10-17 05:12:09 UTC
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倉金, 宙本

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