論語の返読の構造と労力の可視化 〜漢文訓読文の青空文庫の注記を利用したテキスト化〜
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.1370キーワード:
漢文訓読、 論語、 青空文庫註記、 プレーンテキスト、 置換抄録
漢文訓読は、漢文に訓点を加えて訓読文とし、語順を並び替えて日本語として読む。青空文庫の注記は簡易なマークアップであるが、訓点の記法があり、採用する閲覧ソフトも多い。論語全20篇499章の訓読文を、青空文庫の注記を用いてテキスト化した。また、訓読の特徴を見るため、返読を含む長さのステップ数、返読の回数のループ数、返読の構造を示すCR表記を考え、5字までの短文について、語順の並び替えに当たる置換すべてを尽くし、返読の構造を見た。結果、置換、括弧と逆転記号で作られる文、実際の返り点で表せる文、の順で少なくなり、実際の返り点の特性が示された。論語の訓読文のテキストを、句読点で分けた文を単位として分析した。文は3,820個あり、長さの中央値は4字だった。ステップ数は6、過半数の文でループ数1以上あり、訓読の労力が示された。一方、主な返読の構造は60種弱に留まり、複雑な構造ほど少なかった。
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投稿日時: 2025-07-12 00:16:40 UTC
公開日時: 2025-07-18 10:16:07 UTC
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梅村, 俊彰

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