地球の公転に関する教育課程の現状と課題
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.1351キーワード:
理科教育、 地学教育、 天文教育、 教育課程抄録
近代以降の宇宙観を構成する基本概念のひとつに地球の公転が挙げられる。地球の公転を否定する天動説が旧来の保守的立場の比喩として用いられることからも明らかなように,この概念は現代社会において単なる常識にとどまらず,象徴的な意味をも帯びている。歴史的には,地球の公転は年周光行差ないし年周視差の検出によって直接的に実証された。これらの直接的な証拠は,現行の学習指導要領においては,履修者が全体の約1%にとどまる発展科目「地学」でのみ取り上げられている。地球の公転という概念自体は中学校の理科で導入され,いくつかの天体現象を合理的に説明するものとして扱われるが,その必要性や観測的根拠に踏み込んだ学習は「地学」以外では行われていない。このため,地球の公転を実証した観測的事実に触れないまま高等学校を卒業する者が大多数を占めているのが現状である。本稿では,地球の運動が実証された歴史を概観するとともに,学習指導要領における天文分野の変遷を整理し,現行課程における地球の公転に関する学習が抱える課題を明らかにする。
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投稿日時: 2025-07-01 14:08:26 UTC
公開日時: 2025-07-02 09:51:48 UTC
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林, 隆之

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