プレプリント / バージョン1

英語の補文標識とforceの不一致(ーCP分析の再考ー)

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  • 浜﨑, 幸大 京都外国語大学 外国語学部

DOI:

https://doi.org/10.51094/jxiv.1278

キーワード:

補文標識、 談話の力、 英語統語論、 ミニマリストプログラム、 照合理論

抄録

この論文は、生成文法における伝統的なCP(補文句)分析を再考し、補文標識(complementizer)と文の統語的機能(force)との不一致に焦点を当てている。標準的な理論では、補文標識(C)がその直下のIP(句構造)に文の機能(たとえば平叙文、疑問文など)を直接決定するとされている。しかし、「I don’t know which street that he lives in(彼がどの通りに住んでいるのかわからない)」のような例では不一致が見られる。「that」は平叙文の補文標識であるにもかかわらず、埋め込み節は疑問文となっている。

この問題に対処するため、私は3つの仮説を提案する。第一に、「補文標識分割仮説(Split-Complementizer Hypothesis)」は、「that」がCの主要部(head)に位置し、他の要素(たとえば「if」「whether」「do」など)は付加される形で統合されるとする。第二に、「FORCE照合仮説(Force Checking Hypothesis)」は、「that」がすべてのFORCE([平叙][疑問][命令][感嘆])を保持しており、ForcePやSpec-CPとの素性照合(feature-checking)を通じて適切なFORCEが決定されるとする。第三に、「補文標識連携仮説(Complementizer Collaboration Hypothesis)」は、これら2つの仮説を統合するものである。

この枠組みは、埋め込み節だけでなく、主節の文においても説明力を持つ。さらに論文では、「that」が命令文や感嘆文を含むあらゆる文のFORCEに対応して使われてきたという歴史的・現代的使用例を挙げて、この分析を支持している。

この提案された分析は、補文標識と文機能の不一致に対する統一的な統語的説明を提供し、従来のCP分析の限界を克服するとともに、文構造における「that」のより広範な機能的役割を明らかにしている。

利益相反に関する開示

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引用文献

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中島平三 (2017) 『斜めからの学校英⽂法』開拓社出版

Rizzi (1997). The fine structure of the left periphery.

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公開済


投稿日時: 2025-05-28 09:33:49 UTC

公開日時: 2025-06-03 08:03:32 UTC
研究分野
文学・言語学・芸術学