病院における治療と仕事の両立支援に 新しい支援カードを利用する際の課題
DOI:
https://doi.org/10.51094/jxiv.1045キーワード:
治療と仕事の両立支援カード、 がん、 療養・就労両立支援指導料抄録
【目的】治療と仕事の両立支援において、令和6年3月に厚生労働省から公表された新しい両立支援カード(以下、支援カードとする)を用いたスキームを実際に患者と主治医が運用するための注意点を、労災病院において両立支援に関わっている治療と仕事の両立支援コーディネーター(以下、コーディネーターとする)と医師に対して調査した。
【方法】調査は、過去の実際に両立支援を行った患者の診療情報を参照してコーディネーターと医師が回答する自記式質問紙調査により行った。労災病院3カ所において2020年4月から2023年9月までに療養・就労両立支援指導料の初回の算定を行った22例を参照事例とし、その両立支援に関わったコーディネーター9名および医師6名を調査対象とした。調査内容は、患者の勤務情報を自らが支援カードに記載し、それに基づいて就業上の配慮等の主治医意見を支援カードに記載することが、容易かつ適切に実施できるかどうかとした。本研究は労働者健康安全機構本部医学系研究倫理審査委員会の承認(2024-36)を得て実施した。
【結果】参照事例の属性は、疾患別にはがん12例、他疾患10例、年齢は40代以下9例、50代7例、60代5例、職種は現場職11例、事務職11例だった。
コーディネーターに対する調査では、患者自身が支援カードに勤務情報を記入することや、そこから主治医意見書作成に必要な情報を取得することは、8割の事例でガイダンス資料やコメディカルスタッフのサポートがあれば可能との回答を得た。医師に対する調査では、支援カードを用いることで患者からの勤務状況等の聞き取りや主治医意見書等の作成に要する時間の短縮が、6割以上の事例で期待できるとの回答を得た。また、その内容も8割の事例で従来と同程度か劣らない程度には記載できるとの回答を得た。
その他、支援カードの利用による両立支援促進への期待もみられたが、コーディネーターも医師も医療機関における支援カード使用についてのガイダンス資料や運用体制の整備が重要であると指摘していた。
【考察】本研究において、支援カードの本人記載欄を評価したコーディネーターも、医師記載欄を評価した医師も、適切な体制整備や周知を行ったうえであれば支援カードを運用することに大きな課題は感じていなかった。
利益相反に関する開示
本研究に関する研究者の利益相反はない。ダウンロード *前日までの集計結果を表示します
引用文献
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豊田章宏、大西洋英、金子善博、八重田淳、古屋佑子.治療と仕事の両立支援に関わる人材基盤と支援体制に関する調査.日職災医誌71:14-22,2023.
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公開済
投稿日時: 2025-01-22 02:34:10 UTC
公開日時: 2025-01-28 04:25:57 UTC
ライセンス
Copyright(c)2025
金子, 善博
野村, 良平
羽根田, 翔
加藤, 宏一
神山, 博彦
田中, 宏太佳
中島, 英太郎
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